先輩経営者に訊く

お客様の喜びと共に自らも社員も成長する

吉住工務店 代表取締役会長
  吉住俊一氏
「H-Project(保月の家)」でグッドデザイン賞2016を受賞した吉住工務店。自然の風の流れを活かし、四季折々飽きることのない風景と共生するようなデザインの家が評価されています。 創業から変わらぬ「真実一路」の想いで歩み続ける吉住工務店の代表取締役会長 吉住俊一氏に仕事への取り組み方、姿勢について語っていただきました。
  • Q.
    「吉住工務店」は、会長のお父様が創業者だということですが……
    A.
    はい、そして私自身、創業者である父に影響を受けながら育ってきました。私が幼い頃父は左官屋で、私も小さい時からお弟子さんたちと一緒に寝起きをし、厳しいしつけを受けてきました。私が中学生になったころには、左官屋から現在の株式会社に組織変更をしてますます忙しくなり、野球をしながら家の手伝いもしてきました。高校で下宿に入りましたが、高校も大学も親の決めた進路を進みました。就職だけは自分で決めて、アルバイトしていた設計事務所で勤めたのですが、2年勤めた24歳のころ帰ってくるように言われて帰り、現場監督の補佐として吉住工務店で働くことになりました。
  • Q.
    会長が跡を継がれたのはいつごろですか?
    A.
    私が38歳の時です。それまでは、現場監督の補佐といっても毎日が片付け仕事ばっかりで、次に現場の責任者になり、その後事務所に入って事務的な見積もり業務や営業的をするようになりました。その頃から経営の勉強も少しずつ始めました。私が継いだ時には、個々に仕事をしているという感じで、会社らしくはありませんでした。また私は職人でもなく技術もありませんから先輩社員には敵いません。社長に就任して10年間はたくさんのセミナーに参加し、何とか信頼される社長になりたいという一心で勉強しました。厳しい父でしたが、文句も言わずにセミナーに行かせてくれたことは感謝しています。創業者である父のお蔭で忍耐力、粘り強さ、丈夫な体を頂きました。父に感謝し、真実一路の想いを継いでいくのが私の使命ではないかと考えております。
  • Q.
    経営者として、社長就任当時の会長が考えていたことをお聞かせください。
    A.
    やっぱり、雰囲気の良い、明るく元気な会社にしたいなと思っていました。職人さんも多く、様々な人が集まって共同で仕事をしているので、まとめるのが難しいと感じることもありました。私が学んできたことを、社員にも体験させてあげたいと感じ、研修に力も費用も使いました。社員教育は大切にしたい、そして自主的にどんどん参加してほしいと今も思っています。またそれまでワンマン体制が続きましたから、何とかみんなの力で経営したいと考えていました。
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  • Q.
    様々な変革を行ってきたのですね。
    A.
    例えば、私の方で「こういう一年にしたい」と経営方針書を作っても、具体的にどういうことをするのかを示さないとうまくいかない。2001年にISOを導入し、会社の日常業務を文章化し、実行対策をし、毎週実行と確立していくPDCAサイクルが回る体制に持っていくようにしました。PDCAサイクルは社長一人で行うことはできません。各部門ごとに役割分担をして、改善できるところは改善しながら部門経営をしていくように体制を整えてきました。また一時期公共工事が多かったが、住宅部門をやっていきたいということで今から21年前に住宅部門も立ち上げました。
  • Q.
    公共工事と、住宅部門ではやはり違いがあるのですか?
    A.
    公共工事は、事務的に進めることが多い。民間のお仕事には様々なニーズがあり、対応するのが大変なところもありますが、真摯に受け止めて仕事をしていくと成長につながり、やりがいもあります。丹波は良い木があるし、良い職人さんがいる。そのことを丹波の外にも発信し、地域外でもどんどん仕事をしていきたいなと思っています。
  • Q.
    真摯に受け止め、真摯に仕事をするという姿勢を、どのように伝えていますか?
    A.
    まず、仕事に雑仕事はないということを伝えています。想いをこめて仕事をすることの大切さを職人さんたちにも感じながら仕事をしてほしい。竣工式で「どういう気持ちでお客様の家を建てるのか」をお客様の前で宣言してもらいます。宣言することで想いが仕事となり形となって出てきます。どの工程も意味のある、大切な仕事です。
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  • Q.
    建築を通して、働く人が人間として成長していくイメージですね。
    A.
    人間としての成長は、当社としても非常に大切にしていることです。中村天風さんという方の言葉で「人生とは、自己の命に喜びをできるだけ多く味わわせるところに本当の生きがいがある」というものがあります。「喜び」とは、人のためにになり、かつその行いを自分の楽しみとするということなのですが、私なりに考えたのは、人のために喜んでもらうことで、自分自身が満たされていく、自分自身の成長につながるということではないかと思います。自分の心の置き所で、プラスととらえるか、マイナスととらえるか。自分の置かれている現状で、どれだけ現在感謝に切り替えられていけるか。切り替えられる人は、周りに楽しい雰囲気の人が集まってきますよね。一生懸命にお客さまを思って積極的に考える社員はやはりどんどん成長していきます。私自身、今非常に仕事が楽しいですので、いろいろ問題・課題はあるけれど、今を楽しみながらやって行こうと考えています。