先輩経営者に訊く

人と建物と地域の「間」をデザインする

SAJIHAUS 代表者
  出町 慎氏
奈良県出身、「集落に関わる仕事がしたい」という思いで丹波市青垣町佐治にIターン。地元の方と関わりながら、都市部の大学生と佐治地域をつなぐ取り組みを続け、また空き家の利活用サークルを運営、地域が持つもの活用したまちづくりに関わる出町慎さん。本業の建築事務所SAJIHAUSでの取り組み等も含め、「まちづくり・場づくりから考える生業の作り方」をお伺いしました。
  • Q.
    出町さんが丹波市青垣町の佐治という地域に関わり始めたきっかけを教えてください。
    A.
    大学で建築学科に所属していたのですが、研究室の仲間と、2006年丹波市のまちづくりアイディアコンテストに応募しました。コンテストの題材となった敷地が、特に人口減も激しく、危機感も高かった青垣町の佐治でした。定住人口を増やすような取り組みをというテーマでしたが、僕たちが提案したのは「関わり続ける移住」。全く知らない丹波の土地でいきなり定住はハードルが高い。でもまず関わり、継続して関わり続けることで定住と同じような効果が出る。それが新しい定住の形になるのではという思いでした。2007年からは関西大学として具体的に地域と連携しながら活動できる「関西大学佐治スタジオ」の研究員・事務職員として、学生の滞在型授業など、大学と佐治地域をつなぐ活動のコーディネイトをしてきました。授業をきっかけに丹波が好きになり、学生や卒業生が関わり続けることも多いです。
  • Q.
    地元の方と共に取り組まれていることは?
    A.
    宿場町だった佐治はには妻入りの町家が空き家となり残っています。そこで空き家活用サークル「佐治倶楽部」を立ち上げました。地元の方とミーティングを行い、自分も地域も関わる人も楽しくなれるような、空き家の活用について考えています。会員からは年会費を集めて古民家をシェアするので、「カフェをしたい」というような個人的チャレンジにも、空家を賃貸するより安価に試せる仕組みになっています。事例としては、佐治にはBARがないので自分たちで作り、地元の食材で作った料理を出す。すると、地元の方、Iターンの方様々な方の交流の場になり、多くの人がこういう場所を求めているのだと分かりました。また、旧商家の風情がある広い古民家「衣川會舘」を改修して、月イチで「衣イチ」という、モーニング提供やパン祭りなども含めた一日のイベントを運営したり、コンサート会場や、コワーキングスペースとして提供もするなど、地元の人が楽しく集まってくれる場所になってます。
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  • Q.
    空き家を活用する前の改修段階で気を付けていることはありますか。
    A.
    空き家の活用が、改修完了後にしかできないのかという思いがありまして。佐治倶楽部の活動の一環として、工事にも色んな人の参加を募ったり、地元の人に協力してもらったりして、場所づくり自体が「空き家活用」の一環になればと。補助金等で特別な改修をすればそれは特別なことになり、地域の他の場所に応用できなくなるので、応用しやすい改修になることに気を配りました。関西大学佐治スタジオも、改修の傍らで勉強会をしたり、意見交流会をしたり、忘年会をしたりと地域の方との交流の機会ももちました。工期は長くなりましたがプロセス自体を楽しめ、多くの人に関わってもらえるというメリットがありました。
  • Q.
    建築、改修が人と人とをつなげる拠点でありきっかけになるのですね。
    A.
    建築士の仕事はもちろん、建築を作ることですが、地域と関わり活用することで自分の職域を広げていくことも重要だと考えています。「関西大学佐治スタジオ」は地域と接点を持つ、関わりを持つ中で仕事を作っていく営業的な部分。「佐治倶楽部」は空き家の利活用を考案する部分。そして2015年にスタートした「SAJIHAUS」では建築をつくる部分と、組織を作って役割を分けてます。「SAJIHAUS」のコンセプトは「アイダをデザインする」こと。壁と壁の間、床と天井の間、つまりみんなが集まる居心地に良い「空間」をデザインするのが建築士の仕事です。丹波では建物があり、山があり、集落がありますがその間が切れてしまっている状態です。まちと建築との間、まちと山の間、究極では人と人との間をデザインすることも建築士の仕事として重要なのではないかと考えるようになりました。
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  • Q.
    それぞれの「アイダ」をデザインすることについて、具体的に教えてください。
    A.
    例えばツリーハウスを作ることで森や山と人との接点をデザインする。丹波での楽しいくらしを発信、興味を持った都市部の友人を呼び企画をし、都市部の人と丹波の人との接点をデザインする。地域の中高生と地元も切れてしまっているところがあるので、ボランティアや企画などを大学生と一緒に運営する。自分の地域に楽しいことはないと思って暮らしている人がたくさんいるけれど、楽しいものはあり、ただ接点が切れている状態なので、人と地域の間、人と人との間をつなぐ楽しめるものを自分たちで作りだしていくことが重要だと考えながら取り組んでいます。人が集まる場をつくるのは一見建築の仕事ではありませんが、交流する中で人の想い、困っていることに触れ、それが建築の仕事のヒントになったり、実際にBARのカウンターに立つことで使いやすい建築の在り方が分かったりすることもあります。一見自分の仕事とは思えないことに関わることが、自分の職域を広げることにもつながっていると感じます。