先輩経営者に訊く

時代に即した経営と人とのつながりを大切に

株式会社村上養鶏場
  代表取締役 村上康充氏
かつては、春日町で盛んだった養鶏業。昭和40年には100余軒あった養鶏業も今は数件になっています。養鶏の環境の劇的な変化も乗り越えて持続可能な養鶏業を営んできた村上さんに、経営の真髄を語っていただきました。
  • Q.
    村上さんが養鶏に関わって何年になりますか?
    A.
    昭和43年に20歳で就農し、研修時代も含めると養鶏一筋50年になります。この50年、養鶏の業界はめまぐるしいスピードで変化しました。養鶏を始めた当時は、春日町だけでも養鶏家が100軒以上ありましたが、今は市内全域でも養鶏協会に入っているところは約6軒です。軒数は減りましたが、養鶏はこの50年で一番機械化が進んだ業種ではないでしょうか。昭和43年当時は3000羽もいれば大規模養鶏農家と言われた時代でした。私は家でもともと飼っていた1000羽から、1年で8000羽まで増やしました。その際鶏舎を立てるのに、基礎から土間打ち、材料の発注、設計などは自力で行いました。その後5年ごとに鶏舎を立てていき、30000羽ほどにまで飼育羽数を増やしていきました。
  • Q.
    大規模養鶏を行うに当たり、工夫されたことを教えてください。
    A.
    この仕事は片手間ではできません。いかに効率的にできるかを考え、また元々機械電気関係は好きだったこともあり、養鶏の機械化を率先して取り入れました。例えば以前はスコップで鶏糞をかき集めていたのを機械でベルトを引く形で処理するようにしたり、エンジンつきの餌やり機を取り入れたり。平成元年には、養鶏の仕事と並行して鶏舎を建築するのが負担になってきたこともあり、ウィンドレス鶏舎を業者に頼んで建築しました。ウィンドレス鶏舎は窓がなく、ファンで換気し、室内環境を自動で調整する全自動の鶏舎です。餌やり、水やり、採卵まですべて機械にし、卵をパックに詰めるインラインも機械化しました。ウィンドレス鶏舎を取り入れることで、飼育羽数も70000羽まで増えました。
  • Q.
    養鶏農家さんが減っていく中で、村上さんが50年続けられてきたのはなぜですか?
    A.
    一つは前述したように機械化して、効率的に仕事ができたこと。もう一つは、人との出会いで引き出しを増やしてきたことです。30代の頃に地元から4人出て2週間アメリカで、ロスやサンフランシスコ等の養鶏場を見て回りました。その時のメンバーで会を発足して、勉強会を兼ねた飲み会を定期的に行いました。県の青年部長や理事、採卵鶏研究会を結成して代表も務めました。人が集まる会に行くときは、「知っている人の隣に座るな。初めての人の隣に行け」とメンバーにも伝えていました。病気や鶏舎の構造のことなどの情報を仕入れ、採卵鶏研究会で分かち合う、有意義な機会でした。勉強に励み、新しい情報を得えないとふるい落とされる時代になっていました。
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    (様々なところに行って情報を取り入れる。学習する機会を面倒に思うようになると危険信号という話に感銘を受ける)
  • Q.
    人とのつながりや新しい情報を、どう経営に生かしてきましたか?
    A.
    昔から「儲けるなら鶏を飼え、損するなら鶏を飼え」とよく言われていました。卵は日本で需要も多く、加工しなくても直接売れるものなので、時代に合ったやり方をすることで変わります。機械化することで効率は上がりますが、機械をメンテナンスする能力も必要になります。私がいないと機械が傷みやすい、と従業員から言われることがありますが、私がこまめに修理をしているのでそう感じているようです。プロに頼むと機械の修理はコストがかかります。自分で修理をすれば、部品代だけでおさまる。昔から言われる「働きだし」というもので、親方が一生懸命働くことで3倍4倍の効率が生まれ、人件費や経費が掛からず、差額が利益につながってきます。「働きだし」をするためにも、人とのつながりで引き出しを増やしておくことが大切になり、例えば人とのつながりで部品の手に入る場所や修理に関わる新しい情報も手に入ります。
  • Q.
    養鶏を50年続けてきた村上さんから、若い世代へのメッセージをお願いします。
    A.
    便利な機械を使って自分の仕事の効率化を図り、時代に合った経営をすることも大切です。そして経営者の話を聴く、同業者と情報を交換するなどの機会も、自分の引き出しを増やすことになり、どんな仕事にも役立ちます。人とのつながりをおっくうに感じるときこそ奮起することで自分の将来にもつながります。以前あった丁稚奉公などが少なくなり、コンピューターを使って情報が集まる時代ですが、仕事には全部人がついてくるので、つながりを多く持つことがこれからも有利になっていくと思います。