先輩経営者に訊く

何事もとことん!が繋がる秘訣。

バウムクーヘン専門店「まさゆめさかゆめ」
  代表取締役 葉山生子氏
柏原町柏原にて歴史ある名所の一つ、「柏原の大ケヤキ」の傍らにあるバウムクーヘン専門店「まさゆめさかゆめ」。今回は、2011年にオープンした丹波素材にとことんこだわるこのお店の店主・葉山生子さんにお話を伺いました。
  • Q.
    「まさゆめさかゆめ」のはじまりの経緯を教えてください。
    A.
    10年前私は大阪で専業主婦をしていました。働きたいなと思い立ったのですが、年齢的に働き口を見つけるのは難しいと思い、自力でパソコンのインストラクターの資格を取りました。その後、お年寄り向けにパソコン教室を立ち上げる友人を手伝い始めました。そこに段々と人が集まってきてくださり、その人たちの中から「お茶が飲みたい」「お昼が食べたい」など、いろんな声をいただきました。私は昔から料理をするのがとても好きだったので、料理を提供しはじめたところ、とても喜ばれたのです!「1000円払ってでも食べたい」と、毎回献立を楽しみにしてくださる方がいらっしゃいましたし、とても嬉しかったです。そんな中、「空き店舗があるからお店を出してみないか?」と声をかけていただき、そこで「ジ・オーガニックまさゆめさかゆめ」というマクロビオティックを意識した野菜中心のお店を始めました。その頃はまだ「マクロビ」という言葉は地元ではあまり認知度が高くなかったのですが、それが「まさゆめさかゆめの」の始まりです。
  • Q.
    ■ 丹波でチャレンジするきっかけとなった出来事を教えてください。
    A.
    「自然が大事、人が大事」が、今も昔もお店をする上で大切にしていることです。凝り性の私は当時、お料理だけでなく盛りつけ皿にもその自然を求めており、そこで出会ったのが土をねっただけで薪で焼く備前焼。その備前焼を通して、丹波市青垣町にあるとある窯に辿り着きました。それから月に1度のペースで丹波に通うようになり、その中である日まちづくりの空店舗活用事業のお話しをいただきました。柏原町の『ギャラリーるり』の酒井さんです。ご相談いただいた当初は、「10坪の土地で何が出来るだろう?お店の従業員もいれて回るのだろうか?」という不安もありましたが、とりあえず現地を見てみようと思い歩き回ってみたところ、目に留まったのが「木の根橋の大ケヤキ」。私の父は木を扱う仕事をしており、小さい頃からよく父について全国の木を見て回っていました。木に育てられたといっても過言ではない私ですので、根っこが川を渡す橋になっているその大ケヤキの根っこにとても惹かれました。「川」はよく人と人との「溝」に例えられたりします。その溝を繋いでいる大ケヤキから刺激を受け、「丹波で人と人を繋げる何かができないか?」「丹波の特産品になるお菓子で人をつなげる?」と考えを巡らし、「木のお菓子」という意味のバウムクーヘンに辿り着いたのです。
  • Q.
    そのアイデアからのお店の立ち上げに至るまでの話しをお聞かせ下さい。
    A.
    バウムクーヘンに関して私は何も知識を持ち合わせていませんでした。ネットでバウムクーヘンを検索してバウムクーヘンの機械と販売のプロデュースを行っている神戸の会社を見つけだし相談にいきました。そして、「バウムクーヘンづくりは根気と技術のいる作業。絶対に無理だ」と言われましたが、そこに対して私は「根性だけはあります!」と言ってかえってきました。そこからお金の計算を細かくして、柏原のまちづくりをサポートしておられる「株式会社まちづくり柏原」(http://www.kaibara.org/pc/)さんと一緒になって、お店の立ち上げをすることができました。

    言葉に力のある葉山さん。参加者のメモはいっぱいです。
    photo:言葉に力のある葉山さん。参加者のメモはいっぱいです。
  • Q.
    商品開発はどうされましたか?
    A.
     とにかく「丹波を歩く」ことから始めました。歩きはじめて最初に気がついたのは、丹波にはおいしいお米が沢山あるということ。そこから考えを巡らせ丹波のお米を製粉して使ってみようと思いつきました。お米を小麦のかわりに洋菓子に使うのは新しい試みで、粉の粒子、温度調整からなにからなにまで試行錯誤を繰り返しました。使用する卵にもこだわって、いくつかの卵を試してみました。バウムクーヘンは卵の味がそのままでます。なので最初に試した魚肥を食べて育っている鶏の卵はそのままお魚の味がしてしまい…。そこでトウモロコシを餌に使っている鶏舎さんにお願いすることにしました。

     ですが素材にこだわればこだわるほど原価率が上がってしまうことも事実です。お菓子の平均の原価率は大体17%ほどと言われているのですが、最初はなんと30%〜40%と上がってしまい!そこから「バウムクーヘン何層で何センチに切るか?」など、数センチの単位で細かく細かく計算して、ようやく20%代に落ち着けることができました。そんな困難もありますが、新しい商品を開発する際には、まず素材も情報も「自分の足をつかって探す」というのが私の大切にしていることです。足を使って、その道のプロにアドバイスをもらいに行くときも、本気で訊きに行くことで沢山の知恵と情報を聞かせてくださることが本当によくあります。ある会社の社長さんにお菓子づくりの極意を教えていただきました。「こんなことまで!」と驚くほど隠しごとなく。きっとご自身もお店が大きくなる時に御苦労があったことと思います。何事も本気でぶつかることで、私たちの気持ちが分かる方は本気で向き合ってくださいます。

    一つ一つに思い入れのある商品がパンフレットに丁寧に並びます。
    photo:一つ一つに思い入れのある商品がパンフレットに丁寧に並びます。
  • Q.
    新しいことに挑戦する際に,失敗したことはありますか?
    A.
    実は、ないと自分では思っています。と言うよりも、実現するまで諦めないだけかもしれません(笑)。あるいは「失敗」を「失敗」と認識していないだけかもしれませんが。私は「下調べ」を結構します。周りの人からは「無理難題にやたらャレンジする人」と思われがちですが(笑)、自分の頭に「出来上がったイメージ」を映像として強く(妄想ともいう)確信してから実行に移しています。大赤字の経験も沢山ありますが、それも失敗ではなく、次の成功への過程だと言いきかせ進んでいます。
  • Q.
    新しいことに挑戦する際、葉山さんにとって大事なことはなんですか?
    A.
    「食べものと心と身体の繋がり」です。これは、私自身の経験が大きく影響しています。私は食べものでガンが治ると信じています。実際に、私は食べもので父や叔母の病気を和らげることができました。また夫の父親がガンになってしまい余命3年と言われたときも、たくさん勉強をして体によいものを食べてもらっているだけで10年寿命はのびました。自然の土からつくったものをそのまま安全に食べることは、体にも心にもよいことだと信じています。その思いを伝えたくてつくったチラシには、虫が黒豆の葉を食べている写真を使っています。普通、お菓子のお店で虫の写真なんてタブーなのですが、これは「虫が生きられる畑で育った黒豆」(つまりは農薬を使わない、除草剤を使わない畑)ということを伝えたくて、この写真を敢えて使っています。

    「虫が生きられる畑」葉山さんの思いが詰まった写真をあしらったチラシ
    photo:「虫が生きられる畑」葉山さんの思いが詰まった写真をあしらったチラシ
  • Q.
    まさゆめさかゆめさんはPRが上手だなと思うのですが、心がけていることなどありますか?
    A.
    物を売ること」ではなく、「事(こと)を売る」とよくお店で話します。商品ではなく、自分たちのやっている事や思いを一緒に届けるとです。私達がつくるバウムクーヘンは着色料や保存料が入っていません。体に入れるものは安心・安全なものにしたいからです。なので、1週間もほったらかしているとカビが生えてしまいます。ですがそれを見て「カビが生えたじゃないか!」と怒られるお客様もいれば、「添加物が入っていない証拠ね」と、言ってくださるお客様もいるのです。私達がつくるものを買っていただきたいお客様は、後者の方達です。また、そうやってこだわりを大切にしていると、良いご縁も生まれます。まさゆめさかゆめは一度、「ちちんぷいぷい」(http://www.mbs.jp/puipui/)という生産から加工までの番組で紹介していただき、その際に担当の方から「面白い企画がありませんか?」というご相談を受けました。そこで考えたのが、「ぽろたん」という栗を育てているおじちゃんの栗園で栗拾いをして、その栗をそのままバウムクーヘンに加工するという一連の流れを撮影するというものでした。その反響がよく、多くの人がバウムクーヘンを購入してくださりました。また、これもとても嬉しいことですが、まさゆめさかゆめのバウムクーヘンは、日本橋高島屋の創立80周年記念味百選特別企画商品にも選ばれました。こちらは100年以上の老舗が名前を連ねるのですが、その中に3年でまさゆめさかゆめが選ばれたことは、とても光栄なことでした。丹波という地域性からも「畑からお菓子まで」の独自の六次産業は大変だけれど、他の地域ではできない。1粒の種が土から育って土にかえっていくまでを通して自分達で責任をもってやれる素晴らしい仕事だと思っています。仕事というより「人生」そのものです。
  • Q.
    ご自身の信じた道を追求して行く葉山さん。これから追求していきたいことを教えてください。
    A.
    「食べものから人を元気にしていく」、そういうことがしたいです。バウムクーヘンをつくりはじめる前から、私にとって「食」は大切なテーマでした。まさゆめさかゆめを立ち上げてから、お客様との会話の中で、さらに食べものが身体にあたえる影響の大きさと、それを勉強していきたいという思いが強くなりました。最終目標は畑の中のオーベルジュ(※1)をつくること。心が疲れた人や、病気になってしまった人たちでも、そこにくれば元気になる。そんな環境をつくれたらいいなと思っています。

    ※ 1 オーベルジュ 郊外や地方にある宿泊設備を供えたレストラン。


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    まさゆめさかゆめ
    http://masayumesakayume.com/

    ハンサム農園!  
    https://www.facebook.com/hansamunouen

    (まさゆめさかゆめさんが黒豆を作っている農園。葉山さんがほぼ毎朝「農家の朝ご飯」というタイトルで、その日の朝採野菜でつくった朝食を投稿しています。ぜひご覧ください!)

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